『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』幸福とは「ドーパミンの分泌」に過ぎない

あなたはどういうときに「幸せ」と感じるだろうか?多くの人が「幸せ」を実感するのは、以下のようなときだろう。

  • 楽しいことをしているとき
  • 目標を達成したとき
  • 他人に褒められたとき
  • 新しいことを始めようとするとき
  • やる気に満ち溢れた状態になっているとき
  • 好奇心が働いているとき
  • 恋愛感情やときめきを感じているとき
  • 美味しいものを食べているとき

これらの出来事には、ある共通点がある。
それは、これらの状態にある人の脳内ではドーパミンが分泌しているということだ。
つまり、私たちが感じる「幸せ」とは、とどのつまり「ドーパミンの分泌」に過ぎないのだ。

人間を含め、生物には「報酬系」と呼ばれるシステムが備わっている。報酬系とは、簡単に言えば、私たちが生きるために必要な行動を取った時に、ご褒美として快感を与えるシステムである。例えば、お腹が空いている時に、ご飯を食べると「幸せ」と感じる。これはつまり、生きるために必要な「食事」という行動を取ったご褒美 (報酬) として、幸せ (快楽) が与えられているのだ。食事や睡眠といった単純な欲求を解消したときだけでなく、目標達成に向けて勉強しているとき、あるいはスポーツジムで鍛錬しているときに感じる爽快感も、実は「報酬系」による自分へのご褒美だ。

この報酬系の中心となる神経が、ドーパミンを分泌する神経、A10だ。ドーパミンとは、興奮性の神経伝達物質の一種である。A10は中脳の腹側被蓋野(VTA)という部分から出ていて、前頭連合野、偏桃体、側坐核帯状回視床下部、海馬といった脳の各部位まで伸びている。これらは全て、快感に関係する脳の部位である。つまり、VTAが活性化されると、A10神経を伝わって、脳の各部位がドーパミンを受け取るのだ。

ドーパミンは、麻薬による快楽にも関わっている。先に述べたように、「幸せ」という感覚は、脳の部位がドーパミンを受け取ることによって起こる。このとき、ドーパミンがいつまでもそこにあったら、ドーパミンの作用は延々と続いてしまう。それを防ぐために、神経の先にはドーパミンを回収する掃除機のような仕組みがある。実は、覚せい剤やコカインといった薬剤は、この「掃除機」をストップさせてしまうのだ。これによって、ドーパミンが回収されることなく分泌され続け、脳が興奮しっぱなしの状態になるのだ。

要するに、美食がもたらす幸せも、目標を達成した時の爽快感も、麻薬による快感も、脳科学的に見れば、すべて同じ「ドーパミンの分泌」に過ぎない。幸福とは、別に素晴らしいものではないのだ。これを知ってしまうと、幸福を追い求めることが、途端に虚しい行為に思えてくる。この現実を知ってしまったのは、幸か不幸か。