変わり者であることに「生きづらさ」を感じている人には絶対に読んで欲しい──『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』

昨日の朝、いつも通勤で使っている電車が、人身事故で遅延した。なかなか来ない電車を待ちながら、ツイッタで「〇〇線 人身事故」と検索すると、「〇〇線で人身事故起こした奴死ね、てか死んでるかww」「迷惑なんだよ、家で死ね」といった心無いツイートが目に付いた。「電車の遅れ」という自分の都合しか頭に無い、線路に飛び込んだ人の「決死の思い」を想像できない人間に対して、怒りを覚えた。この出来事をきっかけに、私は「人はなぜ自殺に踏み切るのか」に目を向ける必要があると思った。そうして手に取ったのが、モカ,高野真吾著『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』である。

12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと (光文社新書)

12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと (光文社新書)

 

モカさんは元男性のトランスジェンダーだ。10代の頃から、男性であることに違和感を抱き、高校にはほとんど行かず、新宿2丁目に出入りしていた。新宿の女装バーや銀座のホステスとして働いた後、独学でウェブデザインを学び、デザイン会社に就職するも一年弱で退職。その後、女装イベント「プロパガンダ」を立ち上げ、女装カルチャーのパイオニアとして一躍有名になる。24歳の頃には、年収1000万円を越していたという。それ以降も、女装バーを複数経営しながら、夢だった漫画家デビューまで成し遂げる。

このように仕事面では"成功者"だったモカさんだが、内面的には躁うつ病に苦しめられていた。そして、29歳のときに、マンションの12階から飛び降り自殺を図る。しかし、全身骨折や内臓損傷を負うも、奇跡的に助かる。壮絶な痛みに苦しめられる入院生活を通じて、他の人に役立つことをする「貢献」を生きる核にすることを決意する。入院生活を終えると、生きづらさを抱える人に無償で「お悩み相談」を始め、今現在も「苦しんでいる人を楽にする」ための支援活動を行っている。

本書『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』には、朝日新聞記者の高野真吾さんによる、モカさんの半生を追ったドキュメンタリー記事と、モカさん自身のメッセージ・漫画が収録されている。

モカさんの生き様からは、「変わり者である」ことを武器に変える方法を学ぶことができる。例えば、モカさんは、変わっていることに悩む新入社員に対して、以下のようなメッセージを送っている。

『変わっている=劣っている』ではない。変わっていることは個性です。(中略)自分に合っていない環境に無理に合わせる必要はありません。そして、じつは他のみんなも変わり者なのです。無理に世の中に合わせて生きている人たちが大半です。

かくいう私も、変わり者です。普通になりたいと何度嘆いたことか。朝起きられず、週5日出勤できない社会不適合者だった。性別も男性から女性に代わっています。

しかし、私は女装や変わり者の世界でヒーローになれた。自身を持って変わり者を貫き通すことで、ヒーローになった。それはみんなに希望を与えた。自分に合った場所を見つけ、好きなことをしないと人生つまらないですよ。

 モカ、高野真吾著『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』p326

モカさんの凄いところは、自他への圧倒的な肯定力だ。自分が変わり者であることをプラスに捉え、生きるための武器へと変えてしまう。

私自身、自分のことを「変わり者」と自認している。普通に生きることが、普通にはできない。私は今、会社員として働いているが、「なんでこんなことも出来ないのか」と周囲から"否定"されてばかりの日々を過ごしている。ようやく家に逃げ帰っても、今度は「なんて自分はダメなのか」と自分で自分を"否定"してしまう。だから、世の中の常識やルールに合わせるために、自分の変わっている部分を必死で端正しようとしていた。

しかし、モカさんの生き様・メッセージに触れると、「他人が肯定してくれないのならば、せめて自分だけは自分を肯定しなければならない」ということに気付く。「変わっていること=劣っていること」では無いのだ。また、「自分を肯定すること=自分を甘やかすこと」では無い。自分の性に合っていないことを無理にやる必要はない。その代わりに、自分の出来ること、得意なことで、勝負すれば良い。つまり、頑張れることで頑張ればいいのだ。

私と同じように、変わり者であることに「生きづらさ」を感じている人には、『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』を読んで欲しい。絶対に心が楽になることを保証しよう。モカさんのメッセージが、一人でも多くの人のもとに届き、そして一人でも多くの人が絶望という「死に至る病」から救われることを、心より願っている。この記事が、その一助となれば嬉しい。